ウリチルについて

カラリパヤットのマッサージ施術を「ウリチル」と言います。

オイルを用いてマルマを施術するという点で、当院で施術している内容と通じるものではありますが、正確には違いますよという事で、本来のウリチルの目的や手順もここでご紹介したいと思います。

 

論文である『カラリパヤットの諸相-南インド、ケーララ州におけるマーシャルアーツの実証的研究-』(高橋京子著)を参考に紹介させていただきます。

 

ウリチルはリラクゼーションや身体の柔軟性強化に用いられる「スガウリチル」や、リウマチ患者に用いられる「ピリチル」等、用途に合わせた名称があるそうです。オイルはアーユルヴェーダに基づいたものが用いられ、種類も膨大にあるそうです。

 

ウリチルは雨季シーズンが最適とされ、一人の患者に対し14日間連続で施されるそうです。施術の流れは以下になります。

 

1~2日目:患者は直立で施術を受ける。施術者は手のみ使用。

3~7日目:患者は横になり、施術者は手と足で施術を行う。

8日目:患者はアーユルヴェーダに基づく下剤を服用し体内を浄化する。食事もご飯をお湯に浸した栄養価の高いものと決められている。この日は施術を行わず、身体を休める。

9~13日:患者は横になり、施術者は手と足で施術を行う。

14~15日:患者は直立で施術を受ける。施術者は手のみ使用。

 

ここは論文の引用ではなく余談ですが、区切りとなっている「7」という数字は「ステージ、次元を超える」という意味があります。手前の「6」の数字が「時」を表しており(時間は6の倍数で構成)、その次の段階に行く数字であるためにそのような意味があるとされています。ウリチルの施術が7の倍数の日数を用いるのは、この施術により今までのステージを超える手伝いをするという意味合いがあると思われます。

 

施術は14日間、同じ施術師が担当し、常に患者の健康状態をチェックします。チェックには脈診の技術も用いられます。

論文で紹介されているウリチルは柔軟性を高め保健体育的に用いられる「スガウリチル」の内容となっていますが、こちらは硬い組織を緩め柔軟にする事を目的に行います。オイルの浸透とポイントを押さえた施術により柔軟性を高めるのです。硬い所を緩めるわけですから、結構な痛みを伴うそうです。こちらは当院の施術とも共通していますが、勿論受け入れられる範囲で圧を調整し、緩めていきます。痛くても緩んで終わった頃には非常に身体が軽くなり、スッキリすると言われます。

 

ウリチルの施術的特徴は以上となりますが、もう一つ特徴的なものがあります。それは祈りを捧げる事です。以下に論文の文章を引用します。

「治療師は、はじめに患者の横たわるパヤというマットに祈り、患者に触れる前にも患者を神聖なものとして扱い祈りを捧げる。治療師にとってウリチルが危険な仕事であるため、神への祈りは欠かせない。」

このように、施術と信仰が強く結びついているのも、カラリパヤットの特徴です。これは本当に素晴らしい精神だと思います。

 

本来のウリチルは以上のような特徴をもって行われます。当院の施術はまた違いますが、プラーナ、マルマ、アーユルヴェーダの生薬を用いたマッサージオイル等、ウリチルのエッセンスを込めて施術をしているつもりです。実際に受け継いでいるわけではありませんが、実証的研究で効果があり、喜んでいただけるもののみを採用し、施術を行っております。