真の東洋医学

「真の東洋医学」とは何でしょうか。私自身、その答えを求めて模索してきました。その探求の中で、「真の東洋医学は人間の本質を理解し、心身の病を癒すだけでなく、人間の完成-真理-に導く施術である。」と結論付けました。東洋医学は経験医学ではありますが、本質的には古来からある普遍的な叡智と結びついているはずです。なぜなら人間の本質が解らなくては病を癒せないからです。その認識が残っているのがインド伝統医学であるアーユルヴェーダです。アーユルヴェーダの背景にはインド哲学があり、インド哲学が真の人間の本質について説いています。そのため私は東洋医学の主軸をアーユルヴェーダに置こうと決めました。

 

しかしアーユルヴェーダを学んだとしてもインド哲学の実践を通して人格を本物にしていなくてはいけません。それを今の私の師から得ました。私の師は常に私の土台であり、施術を超えたバックグラウンドです。

 

その土台があってこそ、真の東洋医学を打ち立てる事ができます。そこに相応しい東洋医学は、霊性と人格が含まれたアーユルヴェーダのみです。アーユルヴェーダには内科学と外科学があり、徒手施術は外科学に含まれます。外科学の系統はインド伝統武術・カラリパヤットが司っています。カラリパヤットは武術の修練の結果、生体エネルギーであるプラーナ(気)のコントロールを身に付け、それを施術に活かすというものです。プラーナ(気)は基礎的人格が備わらないと養えません。そのため霊性と人格の土台の上に、カラリパヤットの修練を通してプラーナ(気)のコントロールを獲得し、それを施術に活かします。プラーナ(気)のコントロールを獲得したなら、施術理論はさほど必要がありません。人体の急所である「マルマ」の損傷をプラーナ(気)により察知し、そこにプラーナ(気)を込めた施術をする事で病は治るからです。損傷の仕方によって適切な道具が変わってくるのですが、それもプラーナ(気)を獲得したなら自然と解ります。有効なのはアーユルヴェーダでも万能と言われているオイルや生薬です。そして中国伝統医学の鍼灸も良いです。ただし鍼は金がベストです。金が最も良くプラーナ(気)を通します。そして灸も有効です。病変反応が強力な時は鍼灸の方が良く効きます。

 

ここまでが治療についての内容ですが、真の東洋医学の目的まではまだ一歩及びません。病気を治すだけに留まっていたら対症療法に過ぎません。根本的に病気にならないようにするには、人間の心身の欠点を超える、即ち人間の完成-真理-に導くのが本当の施術になります。そのような事は本当に可能なのでしょうか。私は可能と思っています。それは施術の手応えからそれを感じたからです。

 

私は有志の方と真の東洋医学を究めるための研究をさせていただいています。その有志の方々へ私が直接施術を行っています。それはカラリパヤットから倣ったものなのですが、カラリパヤットでは弟子が師の施術を受けるという慣習があるのです。それにより師のプラーナ(気)を弟子に伝達するという意味があります。それを目的として施術を施すのですが、そうすると有志の方々の心が穏やかになったり、精神的な滞りが消えたりと、明らかに精神に作用する結果がみられたのです。また元々プラーナ(気)の造詣がある人には、私の施術を受ける事で施術効果の向上がみられた方もおります。この教育システムにより、人格・プラーナ(気)・技術、全て本当のものが伝わるのではないかと確信したのです。そのためには指導する人が本物でなくてはいけません。私はまだまだですが、この結果をもっと高め、真の東洋医学の中身と仕組みが伝わるように、努力をさせていただいております。

 

以上が真の東洋医学の中身と教育システムですが、一点難しい所があります。それは日本でのカラリパヤットの習得です。日本ではカラリパヤットがまだまだ普及しておらず、伝わっているものでもプラーナ(気)獲得まで結びついているかというと正直厳しい所があります。ですが日本には既にプラーナ(気)を養う武道が存在していました。それは「合気道」です。合気道は「天地の気と合する」事を目的とした武道であり、プラーナ(気)の養成を明確に行っている武道です。実際、合気道によるプラーナ(気)の養成を施術に活かしていたのが合気道八段の渡邉信之師範です。渡邉師範は「触れずに技をかける」事を得意とされた方で、柔道整復師の資格の下で施術を行っていました。合気道の技をみれば一目瞭然ですが、プラーナ(気)の観点が非常に強い合気道家だったのです。この事からも、日本では合気道を通してプラーナ(気)を養い、施術に活かすのが最も良いと思われます。日本の伝統的武道で真の東洋医学を確立するなんて、とても浪漫があります。自国の素晴らしさと特徴を取り入れた、真の東洋医学を確立するのが私の夢です。長くなりましたが、特徴をまとめると以下のような形になります。

 

 

1.土台となる背景はインド哲学。人格を完成させ真理に到達する事が人生の完成である。それに術者と患者を導く医学が真の東洋医学である。

 

2.インド哲学と最も親和性の高い東洋医学がアーユルヴェーダである。アーユルヴェーダの理論と施術がベースとなる。

 

3.アーユルヴェーダの徒手施術はカラリパヤットが司っている。武道の訓練によりプラーナ(気)を養成し、プラーナ(気)の損傷箇所(マルマ)を癒す事で心身を回復させる。

 

4.日本ではカラリパヤットに代わって合気道によりプラーナ(気)を養成する。

 

5.プラーナ(気)を得た施術者はプラーナ(気)未開発の施術者にも施術を施し、人格・プラーナ(気)・技術を知識ではなく体験で伝授する。