治療について

ここでは、当院の治療観についてご紹介させて頂きます。

不思議と思われやすい鍼灸治療ですが、ここで少しでも効く理由を納得頂けましたら幸いです。また当院の治療について知って頂き、不安の解消した上で治療を受けて頂きたいと思っております。

皮膚の調整

 

鍼灸治療とは何なのか。ツボとは何なのか。どのような変化を出すと再現性のある効果を出せるのか。追及して参りました。その中で現在行き着いた答えは「皮膚を調節する」ことでした。

皮膚は第三の脳

傳田光洋氏の著書で、『皮膚は第三の脳』という本があります。

その中で皮膚は単なる受信機関(触覚)だけではなく、自立的に機能して生命活動を支えていることが書かれています。また著書の中で、「脳がない生物は沢山いるが、皮膚のない多細胞生物はいません」と書かれた言葉には、目から鱗で衝撃を受けました。それほどまでに重要な皮膚を、私はあまり理解していなかったことに気づかされました。しかし東洋の先人はその重要性をとても理解しておられたようです。皮膚のもたらす影響力を最大限に引き出し、治療に応用したのが経絡・経穴を用いた鍼灸療法でした。

 

重要なツボは皮膚変化として現れる

経絡の中で重要とされるツボは手足末端に集中しています。手足末端は筋肉が小さいことからもお分かり頂けるように、手足末端のツボは筋肉の緊張として現れることはなく、もっぱら皮膚変化として出ます。皮膚の張りのなさや、妙な違和感として感じられます。ここを鍼灸で刺激することで、皮膚の状態が正常に戻り、張りのある元気な皮膚になります。するとその皮膚変化は全身に作用して、全身を調節してくれます。

実際、手足末端の重要なツボを整える前に主訴の腰痛や肩こりにとりかかっても、スッキリ症状が改善しない場合が多いのですが、事前に整えると症状改善が起こりやすくなります。

手足末端の重要なツボは、刺激し整えるとじんわりと全身が緩むようなリラックス感が得られます。効果もさることながら、刺激することで癒しを体感します。

 

当院では、手足末端の重要なツボを整えつつ、主訴の部位もしっかり整えていきます。

 

 

鍼灸治療の治り方

 

皮膚変化を通して全身を整え、治癒に導くのが鍼灸治療ですが、効き方にも特徴がありますので、解説していきます。

 

 

古い病は長くかかり、新しい病は早く治ります。

これに関しては他の治療と同様で、鍼灸治療も例外ではございません。

古い病は長くかかるというのは、完治するまでは長くかかるという意味です。

古い病でも一回一回治療で症状が改善され、少ない回数でも快適に過ごされるようになる方が多いです。

回を追うごとに鍼灸の効きも良くなり、改善が進んでいきます。

 

治療後は安静にお過ごし下さい(入浴の注意も含む)

治療後は皮膚定着を強めるためにも、安静に過ごすことを勧めております。

治療後のマッサージ、過度の運動、暴飲暴食、アルコールの摂取などで状態が戻りやすくなります。入浴は治療後2時間以降は全く問題ございません。


振動で整える


臨床を重ねているうちにある時から、振動を加えると緊張が緩んだり、逆に力のないところに張りが出てくることに気づきました。

 

理論をあえて考えるならば、「食事について」の項目で少し波形の話を書きましたが、治療も同じように、波形によって正常化が起こるのではと思いました。音叉にもう一つの音叉をつなげると振動が移るように、異常な波形を示している部位に適切な波形ををぶつけることで、正常化が起こるのではと考えました。

 

マッサージでも、しつこくほぐれにくい筋肉に叩打法(肩たたきのように拳でコリをたたく施術法)による施術をすることで簡単に緩むことに気づきました。ただし普通に叩いても緩まないようで、手首のスナップを効かせて中に響くように打たないと緩まないようです。管の鍼を使って施術を何度も繰り返しているうちに手首の柔らかさが身に付いていたようでした。

鍼を刺す際も、管をそのままにして何度も叩いたり、鍼を支える指を叩いて振動を加えることでツボの変化が起こりやすくなりました。鍼灸学校時代にそのような様々な手技を習いましたが、今になってその意義に気づかされました。

ちなみにそのような管鍼による手技は、管鍼術を考案した杉山和一が興した杉山真伝流という流派で伝えられてきた手法になります。

 

その中にはあらゆる形で振動や動きを加える手技が存在するのですが、もしかしたら振動を加えることに意義を見出していたのかもしれないと、偉大な先人を測るのは失礼かと思いますが、ひとり考えるのでした。 

 そのような臨床をしているうちに、最も振動を加えることを生かしている手法があることに気づきました。それが「打鍼」です。打鍼は江戸時代に御園意斎という方が考案した鍼で、腹部の治療に使われるものでした。現在では刺さない「打鍼術」という形で残っています。

この治療は太い鍼の上を小槌で叩いて振動を加えるものだったので、ポイントを絞って振動を加えるこの鍼は、振動の意義に気づいた私にとって願ってもない道具でした。

 



早速膝の痛みで悩まれている患者さんに使用させて頂きました。この方は以前、鍼を刺すことでかえって悪化した経験があったので、鍼を表皮に当てるだけの接触鍼という方法で治療しておりました。しかしなかなか目覚ましい改善が難しく、刺さずに深くまで刺激を加えられればと思っておりました。そこで打鍼を使わせて頂いたところ、刺さずに中まで響く刺激を加えることができました。後日伺うと、膝の腫れが抜け、痛みもかなり改善しておりました。

 

他にも衣服をきたまま背中のこりに使わせて頂いた際には、内臓まで響くようと仰り、しつこいコリも緩めることができました。

 

刺さない上に効果的なので、多くの方に受け入れて頂けることと思います。

 

刺されたくない方は打鍼だけでの治療もできますので、遠慮なくお申し出ください。


徒手施術(あん摩マッサージ指圧)について


当院の治療のメインはあくまで鍼灸ですが、素手による刺激が適している場合もあるので、あん摩マッサージ指圧の手技も行います。

徒手施術には軽擦法(こする)、圧迫法(おす)、揉捏法(もむ)、叩打法(たたく)、運動法(関節を動かす)などがあり、部位や状態に応じて使い分けます。

 

 

 

徒手施術が有効なもの

徒手施術が効果的なものは、コリが比較的浅く、コリが「点」ではなく「面」になっている場合です。点になっているとはツボとしての反応がはっきり出ていることを意味します。この場合は鍼灸を用いた治療が効果的です。

 

施術方法

施術方法は全身または特定の部位に対して決まった手順を行うものではなく、あくまで異常な部位を正常に導く「治療」の目的で行うため、異常な部位のみに手技を加えます。ですがかえってその方が必要とされるところに必要な刺激が加わるので、心地よいものです。