病はツボに表れる

心身の異常が体表面の緊張や軟弱として表れる。

これはツボを活用して治療を行うものなら、誰しも納得する所と思います。

 

マルマによる診断と治療も、完全にこの観点から行われています。

マルマは外傷によってのみ傷つくのではなく、内的要因からも傷つくと言われています。アーユルヴェーダの医書である『スシュルタ・サンヒター』には「諸々の異常な状態が、悪化の基盤としてマルマを利用して、種々の病となって身体を断つ。」と記されています。あらゆる異常な状態はマルマに反映されると言う事です。

 

中医学の経穴も同様の観点と思われますが、中医学は意外とこの観点からシンプルに見ません。理論が好きなのでしょうか、「弁証論治」という中医学的観点の生理学から症状を分析し、最後にその理論に合った経穴を選ぶ、という診方を取ります。その点、日本で学ばれている鍼灸の流派の方が、経穴の反応を重要視して診る傾向にあります。しかし、アーユルヴェーダのマルマほどシンプルではありません。

 

私はインドの学び・アーユルヴェーダと出会うまでは上記の様な理論派なスタイルでツボを選定していたのですが、なかなか思う様に効果が上がりませんでした。しかしインドの学びを経て、プラーナの制御が無意識ながらも備わり、異常な経穴の状態が解るようになってから、めきめきと治療効果が出る様になりました。その時に思ったのは、「異常な経穴の反応を鍼灸の施術で元に戻す事が最も効果的である。」という事でした。そこには正直、理論は必要なかったのですが、既存の中医学と上手く繋げなくてはいけないので、理論は後付けで説明していました。そうするとちゃんと理論的にも矛盾の無い所に反応が出る事も解り、尚一層、中医学の理解が深まったのでした。

 

そしてプラーナを明確に認識し、マルマの観点が備わった時に、「経穴は肉体に作用し、マルマはエネルギーに作用する。」という事を見出したのでした。どちらの異常も「ツボ」の反応として出てくるのです。ツボの異常を元の状態に戻す。これこそ最もシンプルで、最も効果的なツボ療法の姿だと思っています。